開発の歴史
国立国会図書館サーチは、に「国立国会図書館サーチ(開発版)」として公開され、平成24年1月6日本格サービスとしての提供を開始しました。
1. 機能拡張の主な履歴
2. 連携先拡張の主な履歴
3. 開発版について
4. 構築の背景
5. 開発版から本格サービスへ向けて
1.機能拡張の主な履歴
- 日韓・日中・日英の翻訳機能(H22.10)
- スマートフォン対応機能(H22.12)
- NDL新着図書情報の検索・閲覧、RSS配信・API(OAI-PMH)による提供開始(H23.1~H23.7)
- WebNDLAの提供開始(H23.7)
- メタデータフォーマット(DC-NDL(RDF))の改訂(H23.7)
- ユーザビリティ・アクセシビリティの向上・障害者向け資料の検索機能(H23.9)
- 立法情報検索機能、JSTシソーラスでの再検索キーワード表示機能(H23.10)
- 作成中書誌データの配信開始(H23.12)
- 児童向けOPACの提供開始(H23.12)
- NDL-OPACとのSSO(シングル・サインオン)連携開始(H24.1)
- 国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)、総合目録ネットワークシステム、全国新聞総合目録データベース、児童書総合目録の各データベースを統合(H24.1)
- 検索機能の拡充、画面表示の改修、全国書誌のRSSによる配信(H25.1)
- 出版地検索、書誌情報のJSON形式出力、目次情報の表示(H25.3)
- アクセシビリティ改善(H26.1)
- 視覚障害者等用データ送信サービスの開始(H26.1)
- 全国書誌のOAI-PMHによる配信(H26.3)
- WebcatPlusへの書誌詳細画面からのリンク(H27.3)
- OAI-PMHによるデータ提供機能のレスポンス向上(H28.5)
- NDC10版対応(H29.3)
- 書影APIの提供開始(H30.6)
2.連携先拡張の主な履歴
国立国会図書館サーチの前身である、「PORTA(国立国会図書館デジタルアーカイブポータル)」の連携先を引き継ぎ、本格サービス開始後も、連携先を少しずつ増やしてきました。
- 韓国国立中央図書館蔵書目録との連携開始(H23.4)
- サピエ図書館との連携開始(H23.9)
- 人間文化研究機構統合検索システム、e国宝、国立国会図書館のデジタル化資料、J-STAGE等、PORTA連携DBとの連携完了。日本法令索引との連携開始 (H23.10)
- 国会会議録検索システム、帝国議会会議録検索システムとの連携開始(H24.1)
- CiNii Booksとの連携開始(H24.10)
- 沖縄県立図書館『貴重資料デジタル書庫』との連携開始(H26.1)
- 秋田県立図書館デジタルアーカイブとの連携開始(H26.3)
- JapanKnowledgeとの連携開始(H26.4)
- 国立女性教育会館女性デジタルアーカイブシステムとの連携(H26.10)
- 山梨デジタルアーカイブ、農林水産省図書館・電子化図書一覧公開システムとの連携開始(H27.9)
- 九大コレクションとの連携開始(H28.11)
- 文化遺産オンライン、デジタルアーカイブシステムADEACとの連携開始(H29.3)
- 三重県総合博物館所蔵品データベースとの連携開始(H29.7)
- ColBase: 国立博物館所蔵品統合検索システムとの連携開始(H30.3)
3. 開発版について
国立国会図書館サーチ(平成22年8月17日開発版)は、平成24年1月の正式リリースを目指して開発していたシステムの試行公開版です。
広く一般の利用者に試行公開することで、ご意見を反映させながら、より利用しやすいシステムに仕上げていくための初版のシステムとして公開されました。
インターネットで普及しているサービス、実証実験等で実用化が検証された技術を積極的に採用し、順次、機能強化を行っていきました。
4.構築の背景
当館が国立国会図書館サーチを構築した背景には、次のようなものがありました。構築当時の背景をアーカイブとして掲載します。
<社会の動き>
●デジタルコンテンツの増大
●外部の有用なWebサービスの増加
●利用者のニーズの変化
<国立国会図書館の中の動き>
●電子図書館中期計画2004から現在までの動き
●国立国会図書館サーチ(開発版)公開に至る動き(電子図書館関係のイベントを中心に)
●長尾ビジョンと国立国会図書館サーチ
●補正予算による大規模デジタル化
●保存のためのデジタル化と館内提供
<社会の動き>
●デジタルコンテンツの増大
インターネット上では、指数的にデジタル情報が増大しています。政治、経済、文化、社会等、あらゆる領域で情報が電子的に生産・流通し、利用されており、デジタル情報が社会的基盤として重要となっています。もはや、図書館は従来のように紙媒体の資料のみを扱っていればいいという時代ではありません。図書館が、デジタル情報をいかに効率的に収集・保存し、利用者に提供するかが問われています。利用者が必要とする情報は、いわゆる深層ウェブと言われるデータベースの中に多く存在します。せっかくデータベース化されていても、そのデータベースの所在が分からなければ、利用できません。利用者を的確にナビゲートするためには、まず、個々のデータベースの所在と、その中にある情報を可視化(見える化)することが重要です。
●外部の有用なWebサービスの増加
インターネットの普及により、人々は、図書館以外に情報を入手する手段を多く知ることになりました。多くの場合、人々の情報入手の起点はインターネットであり、検索エンジンで調べ物をし、図書の購入はオンライン書店や電子出版サイトで行う、という行動が日常的なものとなっています。また、一般個人による情報発信も盛んに行われ、Q&Aサイト、ブログ、Wikipedia、SNSのようなサービスが世の中に定着し、Twitterのような新しいサービスも生まれています。
●利用者のニーズの変化
当然、利用者の図書館のサービスに対するニーズも変化しています。デジタル・冊子体の区別なく、また所蔵場所に関係なく、自分が閲覧しやすいものを検索・利用したい、と考えることが普通になっています。また、健常者と障害者、一般利用者と専門家等、自宅と移動中や移動先など、利用者のタイプや置かれた環境により、求めるサービスは異なります。従来型のOPACで満足する利用者は、もはや少数と言えるでしょう。
図書館は、そのような時代に対応しなければならなくなっています。
<国立国会図書館の中の動き>
●電子図書館中期計画2004から現在までの動き
国立国会図書館では、上に述べたような情報通信技術の急速な進展に対応し、電子図書館サービスを拡張するため、各種の取り組みを実施してきました。その中期的な方向性とその実現に必要な枠組みを示す電子図書館中期計画2004では、3つの柱を規定していますが、そのうちの1つが「デジタル・アーカイブのポータル機能」でした。それに基づき構築されたのが国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)です。国立国会図書館サーチは、その後継システムとして開発を進めてきて、現在、プロトタイプシステムを公開しています。
●国立国会図書館サーチ(開発版)公開に至る動き(電子図書館関係のイベントを中心に)
年月 | イベント | 概要 |
2004年2月 | 電子図書館中期計画2004策定 | デジタル・アーカイブのポータル機能は、3つの柱のうちの1つ。 |
2004年10月 | PORTAプロトタイプ開発開始 | ・複数台のPCに、 SOA指向で機能分散した形で設計・構築。各種標準プロトコルを実装。 ・OSSのみで構築。 |
2005年7月 | PORTAプロトタイプ試験公開 | サービスの有用性、適用技術の妥当性を検証。 |
2005年10月 | PORTA正式版設計・開発開始 | 実運用規模を想定。・大量アクセス、大量データ、大量ユーザ対応・拡張容易性、障害時運用継続性、環境変更容易性・直感的操作性・可能な限り、先進技術の適用を目指す。 |
2007年10月 | PORTA正式版公開 | |
2009年4月 | 国立国会図書館サーチ開発に向け、館内検討開始 | |
2010年1月 | 国立国会図書館サーチ 設計・開発開始 | |
2010年8月 | 国立国会図書館サーチ・ 開発版公開 | 23の機関と連携し、主要な機能を備えた形で、開発版として公開。今後順次機能拡張の予定。 |
●長尾ビジョンと国立国会図書館サーチ
国立国会図書館は平成20年に開館60周年を迎えるに当たり、使命を再確認し、今後目指すべき方向性を国立国会図書館60周年を迎えるに当たってのビジョン(長尾ビジョン)として次のようにまとめました。
(1) 国会に対するサービスをより高度なものとし、立法補佐機能をさらに強化します。 (2) 日本の知的活動の所産を網羅的に収集し、国民の共有資源として保存します。 (3) 利用者が求める情報への迅速で的確なアクセスまたは案内をできるようにします。 (4) 利用者がどこにいても、来館者と同様のサービスが受けられるように努めます。 (5) 社会に多様で魅力的なサービスを提供し、国立国会図書館の認知度を高めます。 (6) 公共図書館をはじめとする国内の各種図書館とより密接な連携・協力を進めます。 (7) 海外の図書館との密接な連携を行い、情報の共有・交換に努めます。 |
国立国会図書館サーチは上記のいずれにも寄与することを目指していますが、特に、(3)が目指す迅速なアクセス、(4)の地理的距離の克服、(5)の認知度の向上、(6)の関連機関との連携に寄与します。これらの特に関連の深い4項目の実現にはインターネットの活用が不可欠であり、国立国会図書館サーチにはこれらの使命を実現することが求められています。
●補正予算による大規模デジタル化
当館では、近代デジタルライブラリー等、蔵書のデジタル化を推進してきました。平成21年度の補正予算では、127億円のデジタル化経費が計上されました。これは、平成12年度補正予算における計上以来10年間分の予算の9倍に当たる額であり、当館では現在、館の緊急最優先の課題として、デジタル化の実施に取り組んでいます。デジタル化の対象は、戦前期、戦後期刊行図書約75.4万冊、戦前期等刊行雑誌3,300タイトル(27,000冊)、古典籍約10万冊等です。デジタル化したものは、平成22年度以降に可能なものから順次提供します。著作権処理を行ったものは、近代デジタルライブラリー等を通じてインターネット上で提供します。国立国会図書館サーチでは、それらを連携先としていますので、今後、国立国会図書館サーチを通じてデジタル化資料を閲覧することが可能となります。
●保存のためのデジタル化と館内提供
蔵書のデジタル化の目的の1つは、原資料保存です。戦後期刊行図書、戦前期等刊行雑誌等については、今後、原資料に替えてデジタル化資料を館内で提供します。これが可能となったのは、著作権法が改正され、原資料保存のため、権利者の許諾なく所蔵資料をデジタル化することが可能となったためです。今後、来館利用者の方々がデジタル化資料を閲覧・複写される場合、そちらをご利用いただくことになります。
平成24年1月の本格リリースにより、国立国会図書館サーチは、当館内の端末においても利用可能となる想定です。その際来館利用者の方々は、国立国会図書館サーチから、近代デジタルライブラリーや現在開発中のデジタルデポジットシステムの資料を検索し、ヒットした場合はそれらの資料を閲覧することが可能となります。複写の申し込みも、そこからシームレスに行うことができるようになる予定です。
5. 開発版から本格サービスへ向けて
国立国会図書館サーチは、平成24年1月に「国立国会図書館デジタルアーカイブポータル(PORTA)」、「総合目録ネットワークシステム」、「全国新聞総合目録データベース」、「児童書総合目録」のデータベースを統合し、本格稼働することを目指し、開発版をベースとした機能拡張や調査等を進めました。
本格サービスに向けた提供までの当時の開発スケジュールを、アーカイブとして掲載します。

〇 平成21年度開発
当館は平成24年1月から、全館的な次期図書館システムの稼働を目指しています。次期図書館システムに向けた各種の調査・検討を継続し、その調査・検討結果を国立国会図書館サーチの機能改善に反映していきます。
平成21年度開発は、以下の調査結果等に基づいて行なわれました。
(1) 平成21年度に実施した主な調査
- 利用者ニーズ調査:フォーカスグループインタビュー等に基づき、広くユーザの声を集めました。
- 外部サービス動向調査:外部のウェブサービスの現状やトレンドを調査しました。
- 技術動向調査:普及している技術、今後注目の技術をレポートしました。
(2) 平成21年度に開発した機能
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また、平成22年8月17日に試行公開した機能は、国立国会図書館サーチ(平成22年8月17日開発版)の公開についてをご参照ください。
〇 平成22・23年度機能強化開発
機能強化は、平成22年度と平成23年度の2段階に分けて実施します。それぞれの年度の主な機能拡張項目は以下の通りです。
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〇 ユーザ評価
国立国会図書館サーチのシステム改善策検討の基礎情報を入手するために、継続的な評価を実施します。評価は、平成22年度から開始し、平成24年1月の本格稼動後も継続的に実施します。
特に、開発版については、平成24年1月の正式リリースに向け、「ユーザ評価のフィードバック ⇒ システム・サービスの改善」というサイクルを繰り返す、スパイラル型の手法による機能拡張をしていくために、以下のような評価を実施します。
(1) 評価項目
- 利用者数、検索数、情報到達度、API実行回数、総合満足度、検索機能満足度、連携先数(収集・横断検索側)、連携先数(情報提供側)、話題になった回数
- 開発版評価のための具体的な項目(案)
- 全体(リピート率/ユーザターゲッティング/楽しさ・新しさ等)
- 画面(画面構成/表示のわかりやすさ/デザイン等)
- 検索対象(広さ・深さ/網羅性等)
- 検索(各検索機能の使いやすさ/レスポンス等)
- 検索結果表示(表示順/表示項目/書誌同定・グループ化等)
- API(仕様/使いやすさ/マッシュアップ・ウェブサービス連携等)
- その他(SEO対策/障害者対応/パーソナライズ機能等)
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(2) 評価の手法
- 利用者アンケート調査
- ログ収集
- 連携先数集計(収集・横断検索側、情報提供側)
- フォーカスグループ・インタビュー(FGI)
- 行動分析
(3) 評価のサイクル
以下のサイクルを実施し、継続的にサービスを改善していきます。
① 改善リストの検討・決定
② ベンダー調達
③ サービス改善(システム、業務) ⇒①へ
〇 実証実験
各種の実証実験を実施し、成果を国立国会図書館サーチの機能改善のために活用します。平成22年度に予定している実証実験は以下の通りです。
- 市町村立図書館蔵書目録の検索
- 書誌同定・集約表示の精度向上
- シングルサインオンの実現方式の検証
- 全文テキスト化・全文検索
- 日中韓翻訳機能