急性中毒と聞くと、キノコやフグ等の食品中毒やガス中毒が連想されるが、正確な中毒症状と治療法については、一般にはあまり知られていない。本書は、救急救命医学専門の医師によって医療関係者向けに執筆されているが、それぞれの中毒物質における中毒メカニズム、中毒症状、診断と治療を分かりやすく解説しているので、専門家以外の人々にも十分に参考になる資料である。 ; 『第Ⅰ部 総論 急性中毒治療の5大原則』は、全身管理、吸収の阻害、排泄の促進、解毒薬・拮抗薬の4大治療原則の他に、自殺目的の中毒患者に対する精神科的評価と治療を加えているのが特徴である。『第Ⅱ部 中毒物質各論』では、中毒物質ごとに中毒発生の頻度と毒性の強さを図示し、中毒メカニズム、臨床症状、診断、治療および予後、症例呈示、参考文献を掲載している。「医薬品」の項目では、向精神薬、OTC薬(アスピリン、カフェイン、イブプロフェンなど)、循環器系薬(ジギタリス、ニトログリセリンなど)、覚醒剤や麻薬、糖尿病治療薬など、「農薬」では殺虫剤、殺鼠剤、除草剤、「家庭用品」は防虫剤、洗浄剤、タバコ、「化学用品、工業用品」では炭化水素および芳香族化合物、アルコールおよびグリコール類、重金属、ガスなど、「生物毒」では、植物毒、キノコ毒、魚介類、咬傷(マムシ、ハブなど)をとりあげている。付録として「急性中毒の原因となる毒・薬物の鑑別ポイント」、「中毒物質の体内動態一覧」の他、中毒物質・症状別の索引を付す。